私の火山を鎮火させた「ヨイだし」(3)


こんにちは。🌿smaccのセラピスト 佐高葵月代です。
このシリーズでは、私が大好きな「ヨイだし」というワークをご紹介しています。
「ヨイだし」とは、「ダメ出し」の反対。
人や物事の良いところに目を向け、それを言葉にして相手に伝える――そんな優しい習慣のことです。

今回は、私自身の体験をお話しします。

まだアドラー心理学に出会う前のこと。
仕事では、スタッフとの関係がギクシャクし、苛立ちがつのる日々を送っていました。

  • 予定通りに仕事を進めてくれない
  • 約束を守らない
  • 成果を上げたら褒めるけど、長続きしない
  • 結局、私がイライラして爆発する…

そんな話を、有限会社ヒューマン・ギルドの岩井俊憲先生にお伝えしたところ、先生はこうおっしゃったのです。
「あなたは、勇気が足りていない。勇気づけを学ぶといいですよ」

“えっ、私に勇気がない??”
仕事もこなして行動力もあると自負していた私は、かなり驚きました。

でも、先生は続けます。

勇気とは「困難を克服する活力」。
他者を勇気づけるためには、まず自分自身の勇気を育てる必要があるのです。

そして、先生は7.5cm四方の付箋を差し出して、「これに毎日“ヨイだし”を書いてみてください」と微笑みました。
ルールはとてもシンプル。

  • 自分または相手の「今日の良いところ」を書く
  • 感謝できること、されたことを書く
  • 否定的な言葉は使わない
  • 長文でなくていい

“なんだ、簡単そう!”と思って家に帰ったのですが…いざ書こうとすると、何も浮かばないのです。
かろうじて「東京の出張で頑張った」とひとこと書きましたが、翌日もペンは止まったまま。
イライラや嫌だったことはすぐに思い出せるのに、感謝や良いことはなかなか見つからない自分に、ショックを受けました。

気分を変えようと、付箋の色を工夫してみました。
自分用にピンク、夫には水色、スタッフ用にグリーン。

1週間ほど経つと、少しずつ書けるようになりました。
「夫が買い物をしてきてくれて助かった」
「〇〇君、風邪が治ってよかった」
ほんの些細なことでも、良かったことに目を向ける練習になっていったのです。

2週間が過ぎる頃には、だいぶ習慣として定着。
でも効果は…?とまだどこかで半信半疑な気持ちもありました。

そんなとき、出張先でスタッフのB君と話す機会がありました。
「社長、A先輩、最近俺のこと怒鳴らなくなったんです」
「えっ?A君、怒ってたの?」
「はい…前は。でも最近すごく優しくて」

私は驚きました。A君は、私に一番近い存在。つまり、私の怒りを一番浴びていた人です。
振り返ってみると、確かに最近の私は穏やかでした。
メールでも電話でも、感情的になることが減っていたのです。

A君に直接「私、何か変わったと思う?」と聞いたら、こんな返事が返ってきました。
「最近、全然怒らないですよね。前は“ベスビオ火山”って呼んでました」

ベ、ベスビオ火山!?
古代ローマの都市を一夜で消した、あの火山!?
以前の私は、そんなふうに怖れられていたのかと思うと…笑いが止まらなくなりました。

その後も「ヨイだし」はすっかり私の日課になりました。

1日1枚書くのがやっとだった頃から、気づけば8枚も書く日もありました。
最後に色ごとに集めて数えてみたら、一番多かったのはスタッフへの付箋。
そして時間が経つほど、自分に向けた付箋がどんどん増えていたのです。

1年後、再び岩井先生を訪ねると、「どうですか、勇気づけを学べましたか」と聞かれて…
なぜか涙があふれて止まりませんでした。

これが、私がアドラー心理学の世界に入るきっかけとなった出来事です。

あれから16年。
今も日記形式で「良いこと日記」を続けています。

自分の“勇気の泉”を満たしていくことで、心が変わり、人間関係が変わっていくのを、何度も実感してきました。
そして、私の“火山”はずっと鎮火したままです(笑)

今では、「ヨイだし」は私が主宰するアドラー心理学研究会Plusや、非常勤講師をしている精神科クリニックでも取り入れています。

このワークを通して、ひとつだけ確信していること。
それは――笑顔が確実に増えるということ。

あなたの笑顔も、誰かの笑顔も。
「ヨイだし」が、そんな連鎖を生む小さなきっかけになりますように。


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