アドラー心理学研究会Plus代表の佐高葵月代です。9月9日(土)と10日(日・ZOOM)、第125回アドラー心理学研究会を開催しました。今回のテーマは、「『理解できない!』あの人の行動の目的は?」 「マインドフルネスで部屋も心もスッキリ片付けよう!」でした。
とある研修を通して、「なぜこの人は研修でこのような態度をとるのか?」と行動の原因を求めることは、対人関係を膠着状態にしたり、ギスギスするきっかけとなることを体験しました。「なぜ」ではなく「何のために」と、その人の行動の目的に着目することで、視点が変わります。今回の場合「このような態度(または行動)」は私や周囲を不快にするもので、アドラー心理学では「不適切な行動」と呼んでいます。不適切の定義は「共同体に迷惑をかけたり、破壊行為をすること」が基準となります。
「人間は目的に向かって行動する」というのが、アドラー心理学の「目的論」です。その行動の「理由」を「原因(過去の事)」ではなく、「目的(未来の事)」と考えます。例えば、会社に遅刻を繰り返す人がいると「また夜更かししていたんだろう」「だらしない性格だからだ」「責任感がない」などの原因を考えがちです。しかし、「遅刻することによって、その人が達成したいこととは?」と考えると、意味合いが変わります。人は「目的」を達成して幸せを感じるために「行動」します。つまり、誰かを理解するには、その人の行動の目的を【客観的に】理解しなければならないのです。
私たちの身の回りにいる、不機嫌な子供、理不尽な上司、突拍子もない行動に出る人など、誰もが無自覚的であれ目的を達成して、幸せを感じるために行動しているのです。例えば大声で威圧してくる人は、縦の関係を作り自分が優位であることを達成したいと思っているのです。この場合は、威圧されて相手が委縮した状態を見ることで、自分が上であることを達成し、ある種の幸せを感じていると言っていいでしょう。そして、そうすることで自分が共同体に所属しているという歪んだ所属感にもなっているかもしれません。このようなことには本人が気づいておらず、無自覚的に行われているケースがほとんどです。不適切な行動に注目すると、その行動は頻発したりエスカレートします。今回の研究会では、いわゆる「困ったちゃん」に対応するための勇気づけの手法などについて検討しました。
目的がわかれば、行動の理由がわかる ⇒ 行動の理由がわかれば対処できる
勇気づけとコンパッションは、ほぼ同意義と考えてよい概念です。理解できない行動をする人を、本当に理解する必要がある場合は、ある程度の時間と忍耐が必要です。禅僧であり医学人類学博士のジョアン・ハリファックス氏は、コンパッションについて
「人が生まれつき持つ『自分や相手を深く理解し、役に立ちたい』という純粋な思い、また、自分自身や相手と寄り添い『共にいる力』である」
と説明しています。職場において、近年コンパッションを取り入れた組織づくりをするところも増えてきました。辛いこと(持病、子育て、介護など)をアサーティブに伝えられない職場が多いことの表れかもしれません。
後半は、「マインドフルネスで部屋も心もスッキリ片付けよう!」がテーマです。マインドフルネスでは、「モノの片づけは心の整理」と考えます。思い出は良いことも悪いことも「私」への執着です。それを手放すことは片づけることに繋がります。
モノには無意識の記憶が残っているので、捨てられない。例えば「その服が似合う」と褒められた服の記憶や、親が大喜びした記憶=小学生の時に優勝した運動会の賞状のように。
もうひとつ、ゴールがないと、進みようがないのが脳の特性であることを、うまく利用します。
「どうなりたい?」または「どうありたい?」か、ゴールのイメージを描きます。「綺麗になればいいや」程度だと、脳のスイッチが入らないのです。「片づけて人を食事に招きたい。その時は、たこ焼きパーティだ!」「スッキリした空間でピアノを弾きたい。弾く曲はモーツァルト」など、具体的かつイメージができること。畳み方やしまい方などの収納のノウハウは後から!!まずは脳の環境作りをしましょう。
片づけは脳の各場所が連携し合って行う作業です。やみくもにやっても徒労に終わることもあるので、ポイントを押さえて、脳機能を上手に使うこと。中でも前頭前野は片付けや整理整頓をつかさどる重要な部位。呼吸法や瞑想をすることにより、前頭前野が活性化すると、今の自分に必要なものや価値が判断できるようになり、片付けも拍車がかかるようになります。
今月のまとめです。
- 原因にとらわれていると、相手の行動の目的が見つかりづらい。
- 自分がどれくらいのモノを持っているかは、まずは外に全出しする。
- 片付けは小出しに、そして都度達成感を味わうのが継続のコツ。
次回はワールドカフェを行います。テーマは「未来へつなぐ!勇気とコンパッション ~なぜ勇気づけが必要なのか?~」です。今回は多くのメンバーと対話の機会がたくさんある、グループワークが中心です。対話しながら、「なぜ勇気づけが必要なのか」の問いの答えを深めていきましょう。
日程は10月21日(土・交流プラザ)、10月22日(日・ZOOM)です。
⇒ 詳細とお申込みは、こちらから。