アドラー心理学研究会Plus代表の佐高葵月代です。3月16日(土)と17日(日・ZOOM)、第131回アドラー心理学研究会を開催しました。今月のテーマは「自分を大切にする技術 ~言葉の習慣~」です。
今回の「自分を大切にする技術」は、実践する技法として、今後シリーズ化できたらと思っています。アドラー心理学とマインドフルネスの双方からアプローチできる内容でお話しします。
さて、アドラー心理学でもマインドフルネスでも、言葉の習慣が心のベース(ライフスタイル、認知)と強く関係があるというところで一致しています。私たちは1日に6万回以上も思考している(言葉で考えている)とされており、その中でも 1.自分自身に関すること 2.世界に関すること 3.将来(未来)に関すること については、感情が動きやすいと言われています。もし、この3つのカテゴリーにおいてネガティブなことを思考しているとしたら、感情はどのようなものが生まれるでしょうか。
ネガティブな思考にはネガティブな感情がついてきます。思考のクセは気づかずに(無自覚的に)言葉をつぶやくことが多いため、自分のネガティビティに気づかないこともあるものです。私たちは自分について自己批判的になったり、世界(社会)に腹を立てたり、将来を憂いてみたりと、先の3つのカテゴリーについて、様々なことを考えます。心は自動操縦されていて、さまよいだし、ネガティブな世界を漂うと、気分は重くどんよりしたものになりかねません。
脳がその情報が重要であるかどうかを判断する際には、ライフスタイルが働きます。私たちが今、現実だと思って見ている世界は、過去に脳が重要だと判断した情報だけで成り立っているということになるのです。こうした脳の働きにより、私たちが認識する世界は安定した状態が保たれるわけですが、新しい情報や価値観が入りづらくなります。これが、ライフスタイルや認知が変わりづらいということにもなります。
そのため、自分に対して常に「私は完璧でなくてはいけない」というような思考は、緊張、焦り、不安などを引き寄せ、「私がやらなきゃ誰がやる? 周りには期待できない」というような思考は、あきらめ、緊張、怒りなどを誘発します。何度も繰り返される思考の蓄積が、信念を築きます。自分に語りかける言葉は注意深く選択をしましょう!
「あれじゃないと、だめ!!」という視点は「他の方法はないかな?」という思考が生まれにくい状態です。下記の図でいうと赤枠の部分が盲点になっています。視点を変えると、「あれ」以外の選択があり、「ここから選ぼう!!」という新しい選択が今よりも視野を広げ、感情や行動が変わるきっかけにもなるかもしれません。
自分に対して厳しすぎたり、限定的な言葉がけを続けると、勇気づけの態度のひとつである「自己共感(自分の心を受け止めたり、心に耳を傾けること)」が難しくなります。
決めつけや押し付けのループから外れて、新しい言葉がけをすることで、私たちのライフスタイルや認知は変わる可能性が高いのです。一般的に、思考習慣(論理的思考、プラス思考など)は約6ヶ月程度のプロセスを経て、習慣化できると言われます。そのくらい、自分の認知を変えるには時間がかかるということです。
グループワークでは、「私が固持している態度、習慣、スキル、信念でもう役に立たなくなっているものは何だろうか? それを固持することで、自分への言葉がけが厳しくなっていないだろうか?」について意見を交わしました。捨てられないモノであったり、考え方であったりと、執着ポイントが人によって様々!大変興味深い時間でした。
研究会では、私にもっと優しい言葉がけをするために、これまで何度も学んできた「セルフ・コンパッション」を提案しました。セルフ・コンパッションは、マインドフルネスとは表裏一体の概念で、「自分に対する深い思いやりの態度」と理解されています。
セルフ・コンパッションは、3つの要素からなりたっています。
① 自分をいつくしみ、優しく扱って、あまり厳しくしたり、批判的にならないこと。
② 人間なのだから不完全なのが当たり前で、みんながそうなのだと理解すること。
③ 問題を過大視したり、否定することなく、状況をありのままに受けとめること。
この3つの視点に立つと、ネガティブな状況において、自分に少し優しくなれるような気がします。私たちの身体は、温かく接してもらったり、優しく触れてもらったり話しかけてもらうことにより、オキシトシンを分泌します。オキシトシンは、ハッピーホルモンのひとつで、私たちが安全・安心で快適な気分のときに分泌されるとされています。自分自身に語りかける言葉を温かく前向きなものに変えるだけで、周囲と調和した行動がとれたり、貢献感が高まったり、やる気が出て生産性も上がるとしたら、素敵なことですよね。幸福感が高まると感情も安定します。
今月のまとめです。
① 自分はどんな感情が現れやすいかで、自己批判的かどうかわかる。
② 自動操縦されている自分のパターンに気づき、行動を変えていく!
③ 盲点に気づくことで、選択肢が増えたり行動や結果が変わる。
次回第132回の開催は、4月20日(土・札幌市民交流プラザ)、21日(日・ZOOM)です。テーマはアドラー心理学とマインドフルネスの視点から考える「つながっていく ~人と、そして自分と~」です。「つながり」はアドラー心理学では共同体感覚や横の関係に関わる部分で、レジリエンスにおいては6つの要素の一つとなっています。自分との繋がりは、思考-感情-身体感覚の繋がりに、そして自己理解に発展します。次回も、アドラー心理学とマインドフルネスから、テーマを深めていきましょう! ご参加をお待ちしています。