アドラー心理学研究会Plus代表の佐高葵月代です。2022年9月17日(土)と18日(日・ZOOM)、第113回アドラー心理学研究会を開催しました。今月のテーマは「劣等感の汗をかこう!」「マインドフルネスの動く瞑想-身体感覚を磨く-」です。今回のリアル開催には、道南、道北、道東と、片道3時間以上かかるところからのご参加もあり、嬉しい限りです。ご参加いただいたみなさん、ありがとうございました。
私がアドラー心理学を学び始めたときに、この劣等感の捉え方が衝撃的だったのを思い出します。そもそも劣等感は、不完全感を表現する精神的感覚のことです。誰かや何かと比較して、自分の価値が低いと感じる感情で、怒り、不安、焦り、恨み、嫉妬、羨望のような陰性感情を総称するもの。アドラーは従来、芸術と文学の分野でしか使われてこなかった劣等感の概念を発見し、それをアドラー心理学の中心的概念として導入したのです。
著書『生きるために大切なこと』の中で、アドラーは、
人は誰でも劣等感を持っている。劣等感それ自体は病気ではない。
むしろ健全な向上心につながるきっかけになるだろう。
劣等感が病的になるのは、無力感があまりにも大きく、向上心を殺してしまうときだけだ。
と述べています。アドラー心理学では、私たちが目標に向かっているときに、現状と理想のギャップに劣等感が生じると考えます。したがって、目標追求をしている限り、劣等感を感じる機会はあるわけです。劣等感は目標を持ち、よりよく生きようとすることに伴う感情。つまり、頑張っているときにかく汗のようなもの!
グループワークでは、すでに克服した劣等感についても話が出ました。自分が今日あるのを振り返ってみると、劣等感のおかげ様といってよい体験をしている方が何人もいました。研究会では、何度か劣等感をテーマに取り上げましたが、毎回終わってみると清々しいのです。それは、きっとメンバーの乗り越えてきた体験を聞いたり、現在抱えている劣等感について、みなさんがネガティブな捉え方をしていないからなのだろうと思いました。
「私はできそこないだから」「何をやっても、のろまだから」「料理がへたくそなの」「愛想が悪いって、子どもの頃から言われているから」など、自分に対する思い込みが劣等感を感じさせることは多いものです。その自己イメージは、まさに認知(ライフスタイル)を通して自分を見ている姿です。認知が変わるときは、ある体験を通して「あれ?今までと違うぞ」「こんな見方があったとは!」「これでいいんだ!」というような、腹に落ちる納得感を得たときです。自己イメージが書き換わると、感情が変わり、行動が変わります。劣等感を持ち続けても、建設的行動をとることはできます。劣等感を言い訳にして人生の課題に取り組まない「劣等コンプレックス」にならない限り。
後半は「マインドフルネスの動く瞑想-身体感覚を磨く-」です。今回は上半身を動かす呼吸法を取り入れました。マインドフルネス・ヨーガの指導にも使っているものです。ゆっくりと繰り返す動きで、外側に向いている意識が内側に向いていきます。ただ座って瞑想するのが苦手な方にもお勧め!
全身には15種類ほどの呼吸筋があるとされています。長引くマスク生活やテレワークなどで、呼吸筋は使われない傾向があり、浅くて速い呼吸は肺年齢を上げてしまいます。浅く速い呼吸で、全身は慢性的な緊張状態にあります。速い呼吸をすると、脳の扁桃(へんとう)体が興奮します。すると交感神経を通じて心拍数が上昇し、血管収縮が起こります。その結果、血流が悪くなりコリや冷え症を引き起こす可能性がでてきます。ゆっくりした呼吸の場合は、扁桃体が鎮静します。すると副交感神経を通じて、心拍数が低下し、血管拡張が起こります。その結果、血流がよくなりコリや冷え症が解消すると考えられます。また、扁桃体は、怒りや恐怖などの感情もつかさどっています。呼吸数を減らすことによって、扁桃体が鎮静し、不安感やストレスの解消も期待できます。
今月のまとめです。
- 劣等感はさまざまな陰性感情が集まって構成されている。
- 劣等感を抱きながらも、建設的な行動を選び取ることができる。
- 劣等感をひねくれさせて「劣等コンプレックス」にしないことが重要!
- 呼吸が浅く速くなることで、自律神経が乱れて様々な症状を呈することがある。
- 呼吸法の実践で、肺を若返らせてお金をかけずに健康に!
次回のテーマは「アドラー心理学の勇気づけ」「セルフ・コンパッションで自尊心を優しく包む」です。年に1度は、勇気づけをたっぷり学ぶ時間にしましょう。そして勇気づけとほぼ同じ感覚で捉えることができるコンパッションもいっしょに実習します。勇気づけもコンパッションも、自尊心を大切に扱います。次回は心がほっこり温かくなるようなテーマです!
開催日にご注意ください! 今回はいつもと曜日が逆転します。
10月15日(土・ZOOM)、10月16日(日・交流プラザ)です。
会員にのみ、ZOOMの録画配信をしています。ぜひご利用ください。
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