ある日、友人が悩んでいました。「新しい職場で、上司や同僚を本当に信じていいのかわからない」と。
彼は以前の職場で信頼を裏切られた経験があり、また傷つくのではないかと警戒していました。
この話を聞いたとき、私はアドラー心理学の「相互信頼」という考えを思い出しました。
アドラーは、信頼とは「この人は裏切らない」と確信できるものではなく、「私はこの人を信じると決める」ことだと言います。つまり、信じることは、相手を信じると決意することなのです。
実は、私自身もつい先日、信頼について考えさせられる出来事がありました。
ふとしたきっかけで、相手を疑う気持ちが芽生え、それが「きっと~しないのではないか」「失敗するのではないか」という疑心暗鬼の妄想へと膨らんでしまったのです。
信じるというのは、思った以上にエネルギーのいることかもしれません。
しかし、信じると決意した瞬間、不思議と「たとえすべての責任を負うことになっても大丈夫だ」と思え、妄想は霧散し、心はすっと晴れていきました。
アドラー心理学では、人を敵ではなく、仲間や味方として見ることが、健全な対人関係を築く基本だと考えます。
相手を信じると決めることは、相互に尊重し合う「横の関係」をつくる第一歩なのです。
誰かを疑い続けることは、無意識のうちに「この人は敵かもしれない」と身構える姿勢につながりかねません。
しかし、人を信じると決めることで、私たちはより対等な関係を築き、安心して関われる環境をつくることができます。
友人に「信頼は確信ではなく、決意なんだよ」と伝えると、彼はしばらく考え込んだ後、「なるほど」と静かにうなずきました。そして、新しい職場で少しずつ周りの人を信じてみることにしたそうです。
信じることは、相手を選ぶだけでなく、自分がどんな世界を生きるのかを決めることでもあります。「人は信じるに値する」という姿勢で生きると、信頼できる関係が少しずつ築かれていくのです。
今日、あなたも「誰かを信じると決める」一歩を踏み出してみませんか?
⇒ ゆっくり学んで実践に結びつける「アドラー心理学研究会Plus」はこちら