こんにちは。🌿smaccのセラピスト 佐高葵月代です。
今日は、私が心から大切にしている「ヨイだし」の効果についてお話ししたいと思います。
「ヨイだし」とは、「ダメ出し」の反対。文字通り「良いところを出す」ことです。
人や物事の良いところに意識を向け、それを言葉や文字にして、相手にしっかり伝える。そんな習慣のことを指します。
「それって、ありがとうメッセージや褒め言葉と同じじゃないの?」と思われるかもしれません。
でも実はこれ、心のケアだけでなく、私たちの脳にとってもとても良い“脳トレ”になるんです。
私が主宰するアドラー心理学研究会Plusでは、設立当初から毎回最後に「ヨイだし」を行うのが恒例になっています。
これは単なるおまけのワークではなく、参加者の心の中に「人の良いところを見る目」を育てるための、大切な時間だと感じています。
私たちの脳は、良かったことよりも、失敗や嫌な出来事の方が記憶に残りやすい構造をしています。
1日を振り返ったとき、「あれができなかった」「あの時、嫌なことを言われた」「なんであんなことしちゃったんだろう」……そんな“反省モード”に入りがちですよね。
でも、本当は今日も嬉しいことや、感謝すべき瞬間があったはずなんです。
たとえば、誰かが自分のためにしてくれた小さな親切。偶然再会した懐かしい友人。カフェで「今日は特別です」とプチケーキをサービスしてもらったこと……。
その瞬間は確かに「嬉しい!」と感じるのに、私たちはすぐに忘れてしまいます。
だからこそ、意識して「良いこと」「嬉しかったこと」「感謝したいこと」を思い出し、言葉にして相手に伝える練習が必要なのです。
これが「ヨイだし」。続けることで、物事の良い面を見る視点が育ち、どんな出来事も冷静に俯瞰できる心の力も養われていきます。
そして今日は、この「ヨイだし」の力で、実際に職場のチームを変えた、私の友人の素敵なエピソードをご紹介します。
彼女は長年、看護師として現場を支えてきた経験豊富な女性です。
数年前、病院内でのキャリアを評価され、看護師長として新しい部署を任されることになりました。
ところが、いざ配属された部署は、誰が見ても“問題のある職場”だったのです。
看護師は30名以上もいるのに、1年で10人以上が辞めていく。常に人間関係のトラブルが絶えず、誰もがギスギスし、チームとして機能していない……そんな厳しい状況でした。
彼女自身も、何度も「もう無理かもしれない」と頭を抱えたと言います。
でも、彼女はそこで一つの決断をしました。
「これ以上、悪くなりようがないなら、もう自分が“好きなこと”をやろう」——。
そして彼女が選んだのが、「ヨイだし」でした。
まずは自分から、少しずつ動き始めたそうです。
仕事の合間に、手書きの小さなメッセージカードを用意して、誰かの良い行動や素敵な瞬間を見つけては、「ありがとう」や「あなたのここが素敵でした」と伝える。
お菓子を配るタイミングや、ちょっとした休憩時間を使って、心を込めた言葉を手渡す。
しかも、決して大げさなことや、お世辞を言うのではありません。
「〇〇さん、さっき患者さんへの声かけがとても優しかったですね」
「いつも静かにサポートしてくれてありがとう」
そんな“ささやかな、でも確かな良いところ”を、ひとつひとつ拾い上げていったのです。
なんと彼女は、30人以上いるスタッフ一人ひとりの「良いところ」をノートに書き留めながら、続けたといいます。
これには、相当な時間とエネルギーが必要だったはずです。
それでも彼女は「私、ヨイだしが好きなんです」と、むしろ楽しんでいたと言います。
この姿勢こそが、リーダーとして本当に素晴らしいと私は感じました。
誰よりも先に、自分から「ヨイだし」の実践者になる——。
その覚悟が、少しずつチームの空気を変えていったのです。
そんなある日、部署内で「40個の課題をゼロにしよう」というミッションが立ち上がります。
これは客観的に見れば、ほとんど無謀とも思える目標でした。
けれど、ここでチームに驚くべき変化が起きたのです。
「私、これやれます!」
「じゃあ、私も夜勤のときに担当します!」
「一緒にやりましょう!」
それまでバラバラだったメンバーたちが、自然と「協力し合おう」という流れになったのです。
これは、単なる命令や指示では生まれない、自発的なムーブメントでした。
そして、半年後——。
この部署は、見事にすべての課題をゼロにしたのです。しかも、その状態を今でもキープしているのだとか。
これは、病院全体の中でも前代未聞の快挙。
他の部署からも「あのチーム、どうやって変わったの?」と驚かれるほどの成果だったそうです。
友人は、「私は、ヨイだしの力だと思っています」と言いました。
「人は、誰かに『良いところを見つけてもらえる』『自分の存在が認められる』と、自分も誰かのために力を尽くしたくなる。
そうやって、貢献できる喜びや、協力することの意味に気づいていったのだと思うんです」と。
もちろん、それだけではないでしょう。
彼女が、あきらめることなく、根気強くヨイだしを続けた数年間の努力が、何よりもチームを変える原動力になったのだと思います。
そんな彼女は、「もうやるべきことはやった」と、その部署を離れ、今また新しい挑戦に向かっています。
きっと、どこへ行っても、彼女はまた誰かの心に火を灯し、チームを育てていくのだろうと私は確信しています。
ヨイだしは、特別な資格や才能が必要なものではありません。
今日からでも、誰でもすぐに始められる「小さな習慣」です。
ぜひ、あなたの身近な人の「良いところ」を一つ見つけて、伝えてみてください。
「ありがとう」でも、「あなたのこんなところが素敵だね」でも構いません。
きっと、その瞬間から、あなたのまわりに少しずつ温かい空気が流れ始めるはずです。
次回は、ヨイだしで人生が変わったというエピソードをご紹介します。
どうぞお楽しみに。