アドラー心理学研究会Plus代表の佐高葵月代です。6月29日(土)と30日(日・ZOOM)、第134回アドラー心理学研究会Plusを開催しました。今月のテーマは「アドラー心理学とマインドフルネスの『自己効力感と自尊心』の解釈です。
今月の目標は、自信を失っている他者や、自分に自信がない時にどう勇気づけするかを念頭に置いて、何らかの具体的なものをつかんでほしいと思い、資料を作成しました。
自尊心についてお話をするときに、切り離せないのが「劣等感」です。
人は誰でも劣等感を持っている。劣等感それ自体は病気ではない。
むしろ健全な向上心につながるきっかけになるだろう。
劣等感が病的になるのは、無力感があまりにも大きく、向上心を殺してしまうときだけだ。アルフレッド・アドラー『生きるために大切なこと』
劣等感とは、さまざまな陰性感情の集合体のようなもので、ひとつの感情には特定できません。この劣等感は、ライフスタイルの自己概念と自己理想のギャップが大きければ大きいほど強くなります。劣等感を感じるときは、他者との比較や他者からの評価に左右されることが多く、それにより劣等感が大きくなったり小さくなったりします。
しかし私たちは常にこの感情に翻弄されるだけではなく、自分自身を何らかの基準で評価することで、自分自身に肯定的な態度を取ろうとします。それが「自分らしくあること」です。アドラー心理学では「自尊心とは、自分を大切に思う気持ち。ありのままの自分を認め、受け入れること。自分は価値のある人間だと感じること。不完全であっても、今の自分にOKと言えること」と捉えます。自尊心とは、すべての人に備わる価値なのです。
自己効力感は、何かを達成した時に感じる感情(感覚)です。自己効力感が低い人の特徴は、
- 劣等感を言い訳にして(劣等コンプレックス)課題に取組まない、または回避する(=これを人生のウソ、または自己欺瞞と呼ぶ)→行動しないので自己効力感を感じない。
- 他者との比較に執着する→上には上がいるので、いつまでたっても納得いかず、結果的に承認欲求が強くなる傾向がある。
- 高い理想ばかり目標にし、挫折しがち→達成感や、やり切った感がつかみにくい。
- 自分のリソースを理解していない→ないものばかりを欲しがり、今の自分を適正評価できない。
自己効力感を感じるためには、自分自身の成長のプロセスを振り返ることが最善の方法です(自己勇気づけ)。そしてスモールステップをできるだけたくさん作り、大げさなくらい達成感を味わうこと。
アドラー心理学では劣等感自体は悪いものとは捉えません。むしろそれを積極的に建設的なエネルギーに替えて、挫折や失敗を乗り越える力にします。弱さを認め乗り越える人だけが、ほんらいの強さにたどり着きます。
グループワークでは、「劣等感を乗り越えて建設的な行動や結果を出したこと」を話し合いました。
私自身は、10歳の時の忘れられない思い出をお話ししました。
子供のころから乗り物酔いがひどく、自転車以外の乗り物に乗ると、必ず具合が悪くなっていたものです。
ところが、引っ越しをすることになり、私だけ先に祖母の住む町にひとりでバスに乗っていかなければならなくなりました。
乗車時間は40~50分。もう、絶望的でした。
しかし、母は引っ越しの手続きで一緒に行くことができず、結果的に初めてのひとりバス。
真っ青になりながらも、祖母が待つバス停に、何とか吐かずに降り立つことができたことは、まさに私にとってはエベレストに登頂成功ぐらいの快挙でした。
「バスに乗って、大丈夫だった」というこの記憶は、その後も乗り物酔いしながらも「あの時は大丈夫だったから」と自分を勇気づける大きな体験で、勇気の定期預金のように今も私の中に存在します。
他のメンバーも、身体的なこと、病気や家族との関係のことなど、様々な課題を乗り越えた体験をシェアしてくれました。
ここで大事なことは、話している時や話し終わったときに、「やったぞ!」という達成感や「私、がんばったよね!」と明るい気持ちになることです。開示して辛い気持ちになるとしたら、まだ感情的に乗り越えていない体験なのかもしれません。
劣等感はあってもいい!
むしろ目標に向かって努力している人こそが感じる感情!
大切なのは、その劣等感のエネルギーを建設的な行動につなげる努力!
アドラー心理学のこういうところが大好きです。
今月のまとめです。
①自己効力感は行動するエネルギーで、自尊心を支える大きな感覚のひとつ。
②自己概念と自己理想のギャップが大きすぎると、強い劣等感を生じさせる。
③劣等感自体は悪いものではないので、建設的なエネルギーに替える努力を。
次回 第136回の開催は、7月20日(土・札幌市民交流プラザ)、21日(日・ZOOM)です。
テーマは「アドラー心理学とマインドフルネスで考える『何が自分を満たすのか?』~ホールネスとライフスタイル~」です。
今年の年間テーマ「ホールネス再探訪 ~ 今ここから始める、ひとつ先の在り方へ ~」へ寄せたテーマです。満たされたいという気持ちはだれにでもありますが、いったい何に満たされたいのか?私のライフスタイルは何を求めているのか?一緒に考えてみましょう。ご参加をお待ちしています!