第137回 アドラー心理学の認知論とマインドフルネスの 「ライフスタイルとマインドセット」~思い込みで世界はどう変わる?~

アドラー心理学研究会Plus代表の佐高葵月代です。9月21日(土)と22日(日・ZOOM)、第137回アドラー心理学研究会Plusを開催しました。今月のテーマは アドラー心理学の認知論とマインドフルネスの「ライフスタイルとマインドセット ~思い込みで世界はどう変わる?~」です。

マインドセットとは、生まれ育った環境や経験、教育内容、先天的な性質などによって形成される無意識の思考、行動パターン、固定観念、思い込み、認知や思考の癖で、個人の信念や価値観も含まれます。マインドフルネスでは「認知」、アドラー心理学では「ライフスタイル(認知論の中核)」とほぼ同じ捉え方と言っていいでしょう。

人生をヨットに例えると、乗りこなしていくには、天候の変化にも耐えうるヨット自体の基本構造が不可欠です。これが、レジリエンスに相当します。それと同時に経験に培われた技術や勘がなければ荒波を乗り切れません。この部分がマインドセットです。勇気と自己責任を持って「今、ここに生きる自分」の力を信じ、自己決定性(アドラー心理学の5つの基本前提のひとつ)という舵を取りながら、うまく乗りこなしていくという、強い決意を持つことです。

今回は、マインドセット、認知、ライフスタイルの3つを取り扱うので、便宜上マインドセットと呼ぶことで統一します。マインドセットはよく「コチコチ(硬直)マインドセット」と「やわらか(成長)マインドセット」に分けられることが多いです。私たちのマインドセットがとくに色濃く出てくるときはストレスを受けた時など、ネガティブな状況になった時です。アドラー心理学でも、ほんらいのライフスタイルが強調されるのは、「いざという時」と言われます。

ストレスについてのポジティブな捉え方に関連性がある性格的な特徴は、次の3つが挙げられます。みなさんは、自分に備わっていると思いますか?

①楽観主義:リスクを踏まえたうえで、状況の良いところを見つけたり、俯瞰する。
楽観主義はお気楽な楽天家とはまったく違い、ネガティブな状況において、かすかであっても希望を捨てない人のことを言います。「まいったな~」「困ったぞー」と一瞬たじろいでも、一歩引いた目線から状況を把握して俯瞰できると、打開策や、解決策が見えてくることもあります。

②マインドフルネス:後悔や不安から離れ、今ここでなすべきことを見極める。
「今ここ」に生きられれば、過去や未来を想うとき生じるネガティブな感情からも距離を置くことができます。感情は行動のエネルギーになるので、ポジティブな感情が増えれば、建設的な行動にもつながります。

③不安定な状況に耐えられる力:レジリエンスそのもの。
レジリエンスとは、ストレスを受けた時に元のコンディションに戻れる【心の回復力】であり、【変化への適応力】のこと。ストレスに柔軟に対応できる心の筋肉とも言えます。この筋肉を鍛えるには、自分にないものや、できないことに集中するのではなく、今すでにあるもの、できていることに集中します。楽観主義(楽観性)は、レジリエンスに必要な要素のうちのひとつです。

自分が感じたストレスを「良いもの」として信じるか、「悪いもの」として信じるかという捉え方のことを、「ストレスマインドセット」と言います。ストレスマインドセットは、考え方だけでなく、行動にも影響を及ぼすためが非常に強力です。ということは、ストレスマインドセットをプラスにしていくことで、物事全体を捉えるマインドセットが「しなやかマインドセット」になるということですね。

ストレスマインドセットをしなやかに保つには、ストレスには悪い面もあるが「役に立つ点もがある」という視点で状況を見据えること。具体的には以下の通り。

  • ストレスを感じる出来事が起きた事実を受けとめ、現実として認識する。
  • ストレスの原因に対処する方法をしっかりと考える。
  • 情報やサポートやアドバイスを求める。
  • ストレスの原因を克服するか、取り除くか、変化を起こすための対策を講じる。
  • なるべくポジティブに考える努力をし、成長する機会として捉え、その状況においての最善を尽くす。

反対に、ストレスに向き合おうとせず、原因についてなるべく考えないようにしてごまかしたり、ストレスに対し妄想し、悩みに悩んで、堂々巡りをすることは、コチコチマインドセットを作ります。誰かの力を借りるということは、弱さの象徴ではありません。レジリエンスに必要な要素でも、信頼できる人に相談したりアドバイスを求めることも必要だとあります。

アドラーは、同じ出来事を経験しても、その事実に対して「よい意味づけ」をする人もいれば、「悪い意味づけ」をする人いるといいます。つまり、「何が起こった」よりも「どう解釈したか」の方が、ずっと重要だということです。これは本人のライフスタイル=マインドセット によるもので、こだわりや思い込みが現れやすいのです。

マインドセットが変わると、世界が違って見えるかもしれません。それくらい、私たちのマインドセットは強力なのです。アドラーはライフスタイルは10歳前後で基本構造が決まると言いました。それ以降は成長しながらもライフスタイルを変えないように生きていくと言います。

ライフスタイルを変えるためには、未知の不安がつきまといます。「これまでの私でいる方が楽で安全」であることを無自覚的に選択することで、快適ゾーンを出ずにライフスタイルを固持するのです。ヨットの例でいうと、港や湾内から航海に出ないということになります。これでは安全であるかもしれませんが、成長も見られません。心のしなやかさが試されるのは、大きな課題や試練に遭った時です。災害に備えて物理的な準備も大切ですが、日々の心のメンテナンスと、トレーニングをすることも、いざと言うときに備えるのが得策ではないでしょうか。

今月のまとめです。

①マインドセットには、コチコチとしなやかの2種類がある。
②マインドセットは、自覚することで変えることができる。
③相手のマインドセットを無理やり変えようとしない!まずは自分から!

次回 第138回の開催は、10月19日(土・札幌市民交流プラザ)、20日(日・ZOOM)です。
テーマは 「傷ついた心を癒す、自己勇気づけとセルフ・コンパッション」です。これまでも勇気づけとコンパッションはテーマにしてきましたが、今回は徹底的に自分を癒すことに集中します!

⇒ 詳細とお申込みは、こちらから。


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