人生を変えた「ヨイだし」(2)


こんにちは。🌿smaccのセラピスト 佐高葵月代です。
今日は、私が心から大切にしている「ヨイだし」の効果を実感したエピソードの2つ目をご紹介します。
⇒ 最初のエピソードはこちらからご覧ください。

「ヨイだし」とは、「ダメ出し」の反対。
人や物事の良いところに目を向け、それをきちんと言葉や文字にして相手に伝える――そんな習慣のことを指します。

数年前のことです。
ある高校の先生から「生徒の評価をつける際、どうしても成績優秀な子や目立つ子ばかりコメントが浮かび、普通の子、目立たない子への言葉が出てこないんです」とご相談を受けました。
とても誠実な先生で、どの子にもきちんと向き合いたい、でもどうしたらいいのか…と悩んでおられました。

そこで私は「ヨイだし」を提案しました。
「最初は意識しないと気づけないかもしれません。でも、当たり前に見える行動や普段の様子こそ、大切に観察してみてください」と。

先生はとてもお忙しい中、名刺サイズのカードをたくさん用意されました。
そして日々の中で、「〇月〇日、□□くん、〇〇してくれていた。ありがとう」と思いついたタイミングで記録し、それをどんどんビニール袋に入れて机の引き出しに保管したそうです。授業中や廊下を歩いている時でも気が付いたら、忘れないうちに持ち歩いているカードにすぐに書くという徹底ぶりだったそうです。

クラスの人数は多く、決して楽な作業ではありませんでした。
それでも先生はコツコツと続けられ、学期末になる頃には、ビニール袋がパンパンに膨らむほどカードが溜まったのだそうです。

そして評価の時期が来て、先生は改めてカードを仕分けてみました。
すると驚くことに、目立たないと思っていた生徒ほど、感謝やヨイだしのカードがたくさん集まっていたのです。
「自分でもびっくりしました。書き溜めるうちに、“当たり前”に見えることへの感度がどんどん上がっていったんです!」と、嬉しそうに話してくださいました。

やがて、そのクラスで三者面談の季節がやってきました。
ある生徒は「志望校には厳しいかも」と言われる成績でした。
面談の場でお母さんは「この子は不器用で、頭も良くないし…」と、ついダメ出しを始めてしまったそうです。

その瞬間、先生は迷わず言いました。
「お母さん、ちょっとこれを見てください」と、ビニール袋から分厚いカードの束を取り出しました。
そこには、日々の生徒の小さな行動や気遣いが一枚一枚丁寧に書かれていました。
「実験の片付けを最後までやり切ってくれて、ありがとう」
「放課後、追試前の友達に勉強を教えてくれて、ありがとう」
「誰も気づかないところで、手洗いの汚れを拭き取ってくれていたね。ありがとう」・・・

それを見たお母さんは驚き、「こんなことまで全部先生が書いてくれたんですか?誰でもできる当たり前のことに…ありがとうなんて…」と涙を流されたそうです。
生徒本人も「先生、オレのこと…ずっと見てくれてたんですね」と声を震わせながら泣きました。
先生も涙をこらえきれず、3人で泣いたそうです。

先生はそのとき、こう伝えたと言います。
「お母さん、この子は、家でもきっと“当たり前”を大切にできる子なんです。これは不器用とか頭が悪いとかではありません。むしろ、誇るべき素質です。」

「自分を見てくれている人がいる」
その実感が、人にどれほどの安心感と信頼感を与えるか。
ヨイだしには、そんな温かな力があると、私は改めて感じました。

その後、その生徒はぐんぐん成績を伸ばし、見事、第一志望の大学に合格。
今は社会人として、さらに大きな目標に向かって頑張っているそうです。

誰かを伸ばすには、時に期待や賞賛も必要でしょう。
でも私は、それ以上に「見守っているよ」「気づいているよ」と伝えることが、人の心に火を灯し、力を引き出すのではないかと思っています。これは私にとっても、決して忘れられない大切なエピソードです。

次回は、私自身の体験です。なぜ、私がこれほどまでにヨイだしにこだわり、ワークを続けるのかの原点となるエピソードです。
どうぞお楽しみに。

「ヨイだし」シリーズ
チームを変えた「ヨイだし」(1)


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