第101回「劣等感と劣等コンプレックス」「マインドフルネスで不安を乗り越える」

アドラー心理学研究会Plus代表の佐高葵月代です。2021年9月11日(土)と12日(日・ZOOM)、第101回アドラー心理学研究会を開催しました。
今回の前半のテーマは「アドラー心理学の劣等感と劣等コンプレックス」です。現代アドラー心理学では、劣等感の理論や概念は目標追求性の概念に吸収されており、劣等感はアドラー心理学の中ではネガティブな捉え方をされていません。アドラー自身も著書の中でこのように言っています。

人は誰でも劣等感を持っている。劣等感それ自体は病気ではない。
むしろ健全な向上心につながるきっかけになるだろう。
劣等感が病的になるのは、無力感があまりにも大きく、向上心を殺してしまうときだけだ。

『生きるために大切なこと』 アルフレッド・アドラー

劣等感とは、主観的に自分の何らかの属性を劣等であると感じることで、理想の自分(ライフスタイルの自己理想)と現実の自分(ライフスタイルの自己概念)を比較して、現実の自分が劣等であると感じることです。劣等感はきわめて主観的な感覚で、事実には全く関係がないことでも、本人にとっては大問題の「劣等」であることが多いものです。

アドラー心理学では、現状の自分(イラストではマイナス-状態)から目標や理想(イラストではプラス+状態)に向かっているときのギャップが劣等感だとしています。したがって目標追求をしている限り、劣等感を感じる機会はあるわけです。野心的で理想が高ければ高いほど、劣等感が強くなるケースもあります。

これを回避するには、高い目標の手前に小さな目標(スモールステップ)をいくつか用意して、そこに到達した達成感をしっかり味わうこともひとつの方法です。登山でいうと、3合目、4合目・・・と頂上に向かうような感じです。そこに至るまでのプロセスを重視し、がんばっている自分を勇気づけていきましょう。

いっぽう、劣等感と似た言葉で「劣等コンプレックス」というものがあります。これはライフタスク(人生の課題)への対処を避ける口実として劣等感を使うことで、アドラー心理学ではこれがよくないとしています。自分の劣等感を誇張して、必要以上に弱く欠陥がひどいかのように振る舞い、ライフタスクへの建設的な取り組みを避けようとする状態のことを言います。先のアドラーの言葉の「劣等感が病的になるのは、無力感があまりにも大きく、向上心を殺してしまうとき」が、まさにその状態です。

グループワークでは、かつて持っていた劣等感が、自分の思い込みからくるものだったことなどが多く聞かれました。私たちが自分で「事実」だと思っていることは、自分自身の認知(ライフスタイル)に基づく思い込みであることが多いのですね。

劣等感と劣等コンプレックス、そして優越コンプレックスについては、アドラーの著書『生きるために大切なこと』をご参考ください。

後半のテーマは「マインドフルネスで不安を乗り越える」です。前半の劣等感と同様に、不安もネガティブ感情の代表格です。私はかつてパニック障害だったこともあり、不安には人一倍苦しみ、そして乗り越える努力をしてきたつもりです。不安に思うときは、「ああなったらどうしよう」とか「仕事で失敗したら、なんて言われるか…」と、様々な場面を想定していました。それはまるで舞台のリハーサルのようでした。セリフまで克明にリハーサルするなんて!

前回の研究会では「セルフトーク」を取り上げ、自分への言葉がけによって、感情が大きく変わることを学びました。頭の中でネガティブなリハーサルを繰り返すことは、まさに不安製造機をフル稼働するようなもの。感情は自分自身が作り出しているのです。

このことから、不安を減らそうとするのではなく、小さなことでも満足できることや幸せを感じることを見つけたり、安心や安全であるという意識を増やす努力こそが必要だということに気づきます。不安は意識が未来に向いているときに生じる感情です。生きている限り、大なり小なり不安は生じます。不安は軽減させたり、消したりする対象ではなく、乗り越える対象です。そして乗り越えることで私達の心はより強く柔軟になるのではないでしょうか。

マインドフルネスのワークとして、胸を開く呼吸法を実習しました。マスク生活が長くなると、呼吸は浅くなりがちです。身体を動かしながらの呼吸法は、みなさんから好評でした。

今月のまとめです。

  1. 劣等感は、がんばっているときにかく汗のようなもので、がんばっている証拠。
  2. 劣等感は、努力によって克服することができる。
  3. 不安は未来に向けた感情で、消そうとする対象ではなく、乗り越える対象。

次回のテーマは「逆引きアドラー心理学」と「片付けとマインドフルネス」です。「逆引き」とは、「こんな場面でアドラー心理学をどう使う?」というケースを会員から募って検討します。片付けとマインドフルネスって、関係あるの?と思われるかもしれませんが、ものすごく関連があるんです!これを理解して、ゴミ袋30個分を処分して、お部屋も心も元気になった方もいます!

開催日は、10月16日(土・札幌市民交流プラザ)、10月17日(日・ZOOM)です。
ZOOMには、全国から参加可能です!
会員にのみ、ZOOMの録画配信をしています。勉強会に参加できない方は、ぜひご利用ください。
⇒ 詳細とお申込みは、こちらから。

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