アドラー心理学研究会Plus代表の佐高葵月代です。2022年11月19日(土)と20日(日・ZOOM)、第115回アドラー心理学研究会を開催しました。今月も道東や道北など、遠方から足をお運びいただいた方もいらっしゃいました。今月もコロナ対策を万全にしながら、無事に開催することができました。みなさん、ご参加およびご協力をありがとうございました。
今月のテーマは「アドラー心理学とマインドフルネスからの『自己理解』」です。マインドフルネスの思考や感情の捉え方は、アドラー心理学のライフスタイルと非常によく似ています。アドラーは、こんな言葉を残しています。
人間は自分の人生を描く画家である。あなたを作ったのはあなた。
これからの人生を決めるのもあなた。
現在の人生を決めているのは「運命」や「過去」のトラウマではなく、自分自身の考え方であると思い、
未来から今を見ることを習慣にするだけでよいのです。
アドラー心理学では、自分の今ある境遇について、人や環境のせいにせず、自己決定であることを強調します。自分の人生に責任を持ち、課題に取り組む姿勢は、まさにライフスタイルを駆使していることにほかなりません。今回のテーマの自己理解は、まさに自分のライフスタイルにアプローチしていくことになります。ということで、今回はアドラー心理学の下記の理論を使って理解を深めることを試みました。
- 全体論:人間を分割できない全体として把握する。理性と感情・意識と無意識などの対立を認めない。
- 目的論:行動は思考・感情・行為の集合体。行動の原因でなく、目的を理解しよう。
- 認知論:客観事実よりも、客観事実に対する個人の主観的認知をみていこう。
- 対人関係論:精神的な内界よりも、個人とその相手役との対人関係を理解しよう。
認知的特徴は、思考・感情・行為(行動)から考えるとわかりやすいでしょう。感情的場面や、にっちもさっちも行かない状況下で、最も認知的特徴が出やすいというわれます。つまり、ライフスタイルの特徴が表れやすいということです。
感情的場面での気づきを促すためには、下記のことを意識すると良いとされています。
- 感情を向けている相手役を見極める
他人に向けたネガティブな感情は、実は自己嫌悪だったりすることもあります。 - 感情の目的を考える
・その感情を使って、何を要求しているのか?
・どうしてほしいのか? あるいは、どうしてほしくないのか?
・その感情を使って、何を手に入れたいのか? - より合理的で建設的な達成手段はないか?
今まで考え付かなかった代替案を、いくつもつくってみる。 - 目的自体を変更するのはどうかを検討する
目的を変更するときは、ライフスタイルが抵抗してくる場面もあるかもしれません。通常、私たちはオートパイロット(自動操縦=つまり、思考や感情のクセを使う)で、生きています。クセを発動しているときは、自分では気づきにくいものですよね。それが当たり前すぎて、気づきにくいのです。
ライフスタイルとは、生まれてからこれまでに繰り返されている、思考や感情や行為のパターン(=認知)です。自分(自己概念)や世界に対する見方(世界像)であり、人生のあり方(理想像)を決めるガイドラインです。人が変われないのは、今のライフスタイルの方が楽だと思い、それを維持したいという目的のために、自らに対して変わらないという決断を下しているためなのです。
自己理解を深めるには、自分の良さや自分の真価(セルフ・アプリシエーション)を認めることも含まれます。他者との交流を通して、共通感覚と私的感覚の違いで気づけることも山ほどあります。ライフスタイルを占めている自分の古い価値観を見つけ、不要だと思ったら、手放していく努力をしたら良いと思います。ただし、その努力は「なんとなく」の努力ではなく、「自分は変わるんだ!さらに良い方向へ!」という強い決意に向けたものであることを、強調しておきます。
グループワークでは、「今までと違う決断をして、人生の幅が広がった体験」や「自動操縦を手放して得た体験や感情」などについて語りました。
今月のまとめです。
- 自分の性格的なもの=認知的特徴またはライフスタイルは、思考・感情・行為から考える。
- つい考えたりやってしまうことは、マインドフルに立ち止まることで認知でき、改善したり終わらせることができる。
- 自分は変わりたいと思っているだけなのか? 変わる!と決断しない限り変わらない。
次回は今年最後の研究会です。テーマは「年間テーマ「自分と共に、人と共に生きる」を振り返る ~共同体感覚、そしてセルフ・コンパッション~」です。
ぜひご参加くださいね。
12月10日(土・交流プラザ)、12月11日(日・ZOOM)です。
会員にのみ、ZOOMの録画配信をしています。ぜひご利用ください。
⇒ 詳細とお申込みは、こちらから。