第119回「アドラー心理学の楽観主義」、「自己批判へのセルフ・コンパッション」

アドラー心理学研究会Plus代表の佐高葵月代です。2023年3月18日(土)と19日(日・ZOOM)、第119回アドラー心理学研究会を開催しました。今回は、道南から4時間以上もかけて、日帰りでご参加いただいた方もいらっしゃいました。その方は視覚障害があり、資料に目を通すことはできないのですが、ガイドヘルパーさんと共に参加され、サポートを受けながらグループワークでも積極的に発言してくれました。最後の感想では「私は幸せです。一緒に学べる人たちがいて。今日は来て本当に良かったです!」と笑顔で帰られました。参加者全員、大きな勇気をもらえました。みなさん、ご参加ありがとうございました。

楽観的であれ。過去を悔やむのではなく、未来を不安視するのでもなく、
今現在の「ここ」だけを見るのだ。

アルフレッド・アドラー

さて、今回の前半のテーマは「アドラー心理学の楽観主義」です。年に1度、必ず触れるトピックです。アドラーの上記の言葉は、マインドフルネスに通じるものがあり、驚かされます。

私のアドラー心理学の師匠である、ヒューマン・ギルド代表 岩井俊憲先生は、講演や講義の中で、よくこのようにおっしゃります。

真の楽観主義とは「現実直視の楽観主義」である。
これから先は良いことも悪いことも起こると考える。
事態は良い方向だけでなく、悪い方向に行くこともあるので、必要な手立てを施す。
苦しいことにも進んで手を付ける。
意志力で動く。

意志力で動くというのは、感情に流されることなく、地に足をつけて状況を見据えて行動するというように、私は捉えています。アドラー心理学は、戦争を経験したアドラーが立ち上げたものです。能天気な楽天感覚で人生に臨むのを推奨するとは考えにくいですよね。アドラー心理学における楽観主義とは、最悪の事態も考え、悲観的な側面からも検証し準備をし、その上で肯定的に行動することです。

私は子供の頃から悲観的な傾向が強く、いつも最悪の事態を考えていました。失敗することを恐れ、臆病だったので行動につなげることなく、内に籠っていました。なので最初アドラーを学び始めた時、「楽観主義」という言葉には、どことなく抵抗を覚えたものです。しかし楽観の捉え方を知ることで、悲観的であることを全否定しているのではないというところで、安心したのを覚えています。

最悪の事態に陥った時こそ、事態を俯瞰して肯定的な行動につなげるという冷静さ、そして前に進む勇気が必要です。楽観主義を支えるものとして、やはり自己勇気づけは必須ですね。

今回、リアル開催とZOOM開催のグループワークを通して、「以前は悲観的な部分が大半だったけど、だんだんとその比率が逆転しているみたい」という意見がとても多かったのが印象的でした。そして、「困難に遭ったときは、もうダメ!と思っていたけど、乗り越えた後にさらに大きな困難に遭うと、以前の困難なんて屁でもない、と思えるんですよね(笑)」という意見もありました。

自分が乗り越えた経験を振り返り、その時の思考や感情をしっかりと思い出すことは、自己信頼の力を高めます。困難な時こそ、自分の力を信じて前に進みたいものですよね。

【札幌でもフキノトウが出始めました!】

後半のテーマは「自己批判へのセルフ・コンパッション」です。自己批判は完ぺき主義の方や、自分に自信がないときなど、つい行ってしまう思考のクセです。自己批判のあとは、ネガティブな感情が心に残ることから、実は身体にも良くない影響が出てきます。

長く自己批判を続けることで、脳は攻撃されていると錯覚し強いストレスを感じます。この時、脳のストレス防御システムが作動します。ストレス防御システムは、脅威を察知したときに生命維持ための脳の部位である爬虫類脳を活性化させて、ストレスホルモンであるコンチゾールやアドレナリンを放出し、戦うか、逃げるか、凍りつくかの反応をしようと準備をします。このストレス防御システムがたびたび稼働してストレスホルモンが過剰に分泌されると、ホメオスタシスと呼ばれる(自律神経・内分泌・免疫を調整する)機能がうまく働かなくなり、ストレス関連疾患にかかる危険が生じます。

たかが自己批判が、実は私たちの緊張を高め、痛みや不眠などの身体の症状を誘発することもあるとは、驚きですよね。今回は、自己批判に気づいたときに簡単に行える、呼吸と身体に意識を向けるセルフ・コンパッションのイメージワークを行いました。簡単なワークですが、習慣化することでストレス防御システムが不用意にスイッチが入らないよう、脳の機能を変えるのが期待できます。

今月のまとめです。

  1. 感情に流されていると思ったら、意志の力で楽観方向に舵を切る!
  2. 説明スタイルは思考のクセそのもの。ライフスタイルが影響している。
  3. 強い自己批判には思考で対処しようとしない。まずは呼吸と身体感覚にフォーカスし、緊張をやわらげ、感情をなだめ許し、気持ちを落ち着かせる のステップに進む。

次回のテーマは「アドラー心理学の自尊心」と「マインドフルネスを継続する技法~リフレーミング~」です。
ぜひご参加くださいね。

4月22日(土・交流プラザ)、4月23日(日・ZOOM)です。
会員にのみ、ZOOMの録画配信をしています。ぜひご利用ください。
⇒ 詳細とお申込みは、こちらから。


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