第135回 アドラー心理学とマインドフルネスで考える 「何が自分を満たすのか? ホールネスとライフスタイル」

アドラー心理学研究会Plus代表の佐高葵月代です。7月20日(土)と21日(日・ZOOM)、第135回アドラー心理学研究会Plusを開催しました。今月のテーマは「アドラー心理学とマインドフルネスで考える 「何が自分を満たすのか? ~ホールネスとライフスタイル~」です。

今年の年間テーマは、「ホールネス再探訪 ~ 今ここから始める、ひとつ先の在り方へ ~」で、昨年の年間テーマ「私らしさを活かして、全体性を生きる」を引き継いだものです。ホールネスとは、①欠けたもののない満ち足りた状態で、「全体性」や「全体感」を意味する。②ポジティブもネガティブも含めた広範囲の心理状態を受け入れる能力を身につけて、人生の出来事に効果的に対応できる状態のこと。つまり、裏表ある自分だとしても、それを認め受け入れていく姿勢とも言えます。

誰しも明るい面:表と、ダークサイド:裏を持っています。例えば、表の顔は、相手に好かれることを重要視し、好かれる努力を惜しまない。集団の中では誰とでもコミュニケーションが取れる傾向があるため良い潤滑剤役となるが、裏の顔としては自分が目立って嫌われるくらいなら、最初からできるだけ目立たないようにするという、賑やかで明るい雰囲気の表に対して、裏はおとなしくて、おどおどした暗めの雰囲気を出すことが多いなど。

一見、真逆のようなパーソナリティのように思えますが、どんな自分を誰の前で表現するかは、私たちのライフスタイルが決めて、うまくバランスを取っています。しかしこの乖離がひどくなると、自分らしさに疑問を持ったり、本当の自分がわからなくなったりすることもあります。そのため、私たちは「ほんらいの自分らしさ」に目を向けることで表と裏の自分を統合していく必要があります。

アドラー心理学ではネガティブな面よりも、ポジティブな面(建設的な面)を強調して、長所を伸ばすことを優先します。不完全であっても、ありのままの自分を受け入れていく態度は、自己勇気づけの3つの態度の「尊敬(自尊心)」にあたります。人と比較ばかりしない、他者からの評価だけをあてにしない、自分らしくあること というのが、自己受容の大切な要素です。

バンクーバー在住の医師ガポール・マテは、著書『身体がノーと言うとき』で次のように述べています。

「healing(治癒)」という言葉が「whole(全体)」を意味する言葉を語源としており、今でも「wholesome」という言葉は「健康な」という意味でつかわれていることを、私たちはほとんど思い出すことがない。治癒することは「全体」になることなのだが、どうしたら今よりも「全体」になることができるのだろう?

今回は、ホールネスを体験するためには、「癒す前向きな姿勢」が必要ということで、マテが著作の中で触れていた「心身が癒されるための7つのA」も参考としてグループワークを勧めました。

中でも私が強調したいのは「Awareness 気づき」です。身体は言葉を持たないので、痛みやかゆみ、しびれなどで「何かがいつもと違うよ」「もう限界だ」などと身体感覚で伝えてくれます。気づくということは、自分の身体に現れるストレスの兆候を知ることです。数字(検査結果など)や思考(〇〇を飲んでいるから大丈夫!など)だけで心身を捉えるのではなく、身体は何をどうやって伝えてくれるかを知ることです。

そしてもうひとつ大切なことは「Autonomy 自律」です。自律とは、価値観や信条、理念や哲学などの内的要素に関して、支配や制約を受けずに自らの考えで行動を起こすことです。マテは、著作の中でジョアン・ピーターソン(セラピスト)の言葉を引用していました。

「私」を定義するとき、人生と人間関係に自分は何を求めているか、もっと欲しいものは何か、減らしたいものは何か、欲しくないものは何か、私が超えたくない限界はどこまでかと、自分に問うことから始まる。こうして私たちは自分を定義しようとするなかで、今という特定の時に、自分の内奥にある中核に照らして、自分は人生において何に価値をおき、何を欲しているかを明確に知る。自分を支配する中核は自分自身の中にあるのだ」要するに自律とは、私たちを支配するこの内奥の中核を成長させることなのである。

この場合の「中核」は以前研究会で取り上げた「私の中核的価値(=価値観)」のことです。

アドラー心理学の共同体感覚に類似した要素もありました。「Attachment ふれあい=つながり」です。アドラー心理学の幸せの3要素のひとつは、「よい人間関係を持っているかどうか。【相互信頼】」です。「つながり」とは、他者との関わり合いや関係のこと。相談できる友人や家族がいると、困難を乗り越えやすくなり、また他者からの支えが精神的な安心へと繋がります。共同体感覚を一言でいうと「他者を仲間だと見なし、そこに自分の居場所があると感じられること」です。心を開ける人がいることや、社会と関わり自分の存在を認識できることは、長寿の秘訣としても近年認識されています。つながることが、癒しに必要な要素であることは疑いありません。

今回はテーマがテーマだけに、グループワークでは濃厚な体験談や、意外な意見も飛び出して、非常に興味深い回となりました。

今月のまとめです。
①「私」は長所も短所も兼ね備えた、唯一無二の存在。
②ありのままの自分を受け入れる態度は、自己勇気づけの「自尊心」のこと。
③心身が癒されるためには「私」らしさを見つけ、内側での統合が必要。

次回 第136回の開催は、8月17日(土・札幌市民交流プラザ)、18日(日・ZOOM)です。
テーマは「心の痛み、身体の痛み ~勇気づけは薬になるか?~」アドラー式対処法、そしてマインドフルネス(脳科学)からの考察 です。近年、「痛みは脳が感じる感情の一種」として捉えられています。感情次第で痛みが増したり減ったりする?はい、脳科学がたどり着いた真実なんです。そしてアドラー心理学の勇気づけは心身の痛みを癒せるか?にも触れていきましょう。ご参加をお待ちしています!

⇒ 詳細とお申込みは、こちらから。


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