アドラー心理学研究会Plus代表の佐高葵月代です。10月19日(土)と20日(日・ZOOM)、第138回アドラー心理学研究会Plusを開催しました。今月のテーマは アドラー心理学とマインドフルネスの「傷ついた心を癒す 自己勇気づけとセルフ・コンパッション」です。
今月の研究会の目標は「大きなネガティブな感情に見舞われたとき、踏ん張る力、立て直す力の育み方を考えてみましょう」です。困難を克服する活力である「勇気」が試されるのは、実は何か思わしくないことに直面したり、突然の不運に見舞われたときです。備えあれば憂いなし、は心にも当てはまるのです。そのような時、私たちがどのような態度をもって対処するかは、日々の勇気の力が試されるところです。強い筋肉は一朝一夕では作られません。ストレスを柔軟に受け止める心の筋肉ともいえるレジリエンスや、困難を克服する活力である勇気も、日々のトレーニングが、いざというときにモノを言います。
実は今月の資料を作成している最中に、長年の友人が急逝しました。その方は元気いっぱいで太陽のような温かい人だったので、訃報を受けた時は事実が受け止められず、一瞬思考が停止して、呼吸が浅く速くなるのを感じました。
このようにショックを受けたとき、その場に立ち尽くしたり、体が硬直して動けない、声が出ない、脈拍が低下し血圧が落ちて意識が遠のくような感覚を「シャットダウン」と呼びます。これは、強いストレスから身心を守るために、心身を硬直させて外界からの刺激をシャットダウンする、自律神経の身体防衛反応です。この状態が長く続けば続くほど、回復に時間を要します。
私はこのままではまずいぞと、とっさに気が付き、すぐに呼吸に意識を向け、1時間ほどゆっくりとヨーガをしながら呼吸と体の動きを連動させることに集中しました。すると、上がった血圧が下がり、呼吸も安定し、心身の緊張もほぐれ、大きな悲しみと狼狽からいったん離れることができ、朝までぐっすり眠れました。
図らずも自分の体験をもとに語ることになった今回は、ストレスを受けた状態から、できるだけ早く元の状態に戻れるよう、呼吸、タッチ(自分に触れる)、言葉がけ を意識し、勇気づけとセルフ・コンパッションを探ります。
研究会では、簡単な呼吸法として「四角の呼吸法」(吐く1:吸う1)と長方形の呼吸法(吐く2:吸う1)を実習しました。最初、正方形をイメージし息を吐き、一片を心に描きます。次に吸って一片を描き…を繰り返して、四角形をイメージする呼吸を続けます。イメージが作られたら、今度は長方形をイメージします。吐いて長辺をイメージ、次に吸って短辺をイメージし、長方形を描きます。この呼吸法は、不安症の方にも向いています。5分程度の実習が望ましいです。
セルフ・コンパッションでは、スージングタッチという、自分の身体に触れて心をなだめ、安心感を作る手法を行いました。ネガティブな感情に見舞われたら、椅子の背もたれに背中を預けたり、仰向けになって、胸を開いた状態でスージングタッチをしながら、長方形の呼吸法を行います。5分程度行ってみて、気分の変化に意識を向けてみましょう。
呼吸とスージングタッチをしながら、心の中では言葉を使って自分を勇気づけます。自分自身に対して、親しい友人に接するように語りかけましょう。
【言葉がけのポイント】
1. 自分をいつくしみ、優しく接し、厳しくしたり、批判的にならないこと。
2. 人間は不完全なのが当たり前で、みんながそうなのだと理解すること。
3. 問題を過大視したり、否定することなく、状況をありのままに受けとめること。
自分が語りかけられてホッとする言葉を覚えておくと、とっさの時に自分を救います。研究会では「大丈夫、大丈夫」「ぼちぼち、ね」「うまくいっているよ」などが多く挙げられていました。
今回自分は、上記ポイントに従って
1. 突然の訃報でとても驚いたね。そして悲しすぎてまだ信じられない気持ちだね。泣きたくなったら泣こう。
2. 私だけじゃなく、ほかの友人たちもきっと同じ気持ちのはず。お互いの気持ちを話すようにしよう。
3. 今、私にできることは、ご家族へお悔やみを伝え、彼のご冥福をお祈りすること。
と、自分に語りかけながらスージングタッチを行いました。ネガティブな感情は、受け止めると自分が押しつぶされると思う人が多いでしょう。しかし「安心してその感情を感じてもいいんだよ」と自分にゆるしを与えることで、固まった感情がほどけていくのを感じます。
大人になるにしたがって、「大人なのに泣くのは恥ずかしいことだ」「メソメソするんじゃないの!」など周りから言われることも増え、だんだんと感情に蓋をしたり、棚上げにするのが当たり前になります。でも本当は「好きなだけ悲しんでいいよ、そばに一緒にいるからね」と言ってほしかったのじゃないかなと思うのです。大人になった今、いったん感情を受け止めて、自分自身が親友のように語りかけることで、現在の感情や過去の感情のありようが変化するのを感じます。
今月のまとめです。
①勇気づけは日々のトレーニングが必須。呼吸法もそのひとつ。
②触れることの優しさを感じることも、自己勇気づけ。
③心がけが言葉がけに繋がる。自分を勇気づける言葉をお守りに!
次回 第139回の開催は、ZOOMが11月23日(土・祝)10:00~12:00、11月24日(日)日曜日が札幌市民交流プラザでのリアル開催です。いつもと曜日が入れ替わっていますので、ご注意ください。
テーマは アドラー心理学とマインドフルネス「『何のために?』と、目的論に立ち返る客観視の磨き方」です。変えられないものにこだわりすぎると、原因論から逃げられないものです。何のために?と感情や行動の前に立ち止まる、目的論の視点に立って、客観視を磨きましょう。