ヨーガ療法ダルシャナ (伝統的ヨーガにもとづくヨーガ療法標準テキスト)

2017darshana

smaccのヨーガ療法士 佐高葵月代です。今日は、私の尊敬するアドラー心理学の先生であり、ヨーガ療法士の大先輩でもある、鎌田穣先生の著書をご紹介します。鎌田先生は、大阪の精神科のクリニックで、実際にヨーガ療法とカウンセリングを実践されている臨床心理士です。お忙しい時間を縫って、全国のヨーガ療法士の拠点をめぐり、私たち療法士にダルシャナの技術を教えてくださっています。今日ご紹介する『ヨーガ療法ダルシャナ (伝統的ヨーガにもとづくヨーガ療法標準テキスト)』は、そのダルシャナの技術をまとめた集大成です。私たちヨーガ療法士にとってはもちろんのこと、心身に関わる全てのセラピストの方にもお勧めしたい本です。ダルシャナのプロセスには、アドラー心理学が用いる手法も多く、カウンセラーの方にも興味深いと思います。ぜひ、ご一読をお勧めいたします。

以下、本のレビューになります。——————————-

「ダルシャナ」という言葉は、ヨーガ教室やスポーツジムでヨーガを実習している方でも、ご存知のない方が多いかもしれない。「ダルシャナ」とは、ほんらいは師匠が弟子に智慧や真理を伝えることを指すが、ヨーガ療法においては、療法士(セラピスト)がクライエント(患者さん、または相談者)と対話して一連のセラピーを進める技法のことを言う。

本書「第1章 序論」にもあるように「ヨーガ療法は、中医学や漢方医学と同じように、独自の人間観、病理論、治療/指導論、技法論を備えており、心身両面に対してアプローチすることが可能である。」ので、ヨーガ療法士は治療/指導につなげるために、的確な見立て(アセスメント)をする必要がある。目の前のクライエントが、何に困っていて、どうなっていきたいのかを組み立てるためのアセスメントに必要なのがダルシャナである。

ニュアンスとしては、カウンセリングに近いと思われる方も多いだろう。ヨーガ療法は、このダルシャナを通して、クライエントが自らの人生に責任を持ち、勇気づけができるよう寄り添っていく。同じく「序論」には、「実習者が自身の理智的特徴を自覚できるように援助し、次には、実習者が自らの執着を自ら手放していけるように、次なる道の構成とその具体化を促進するための再教育を行なっていく。」とある。

ここまで読まれた方は、ヨーガはポーズや呼吸法だけではないのかと驚く方もいるだろう。ヨーガ療法では、ポーズ(アーサナ)や呼吸法は指導のひとつで、目の前のクライエントには、どのポーズや呼吸法が必要かを見極める技術が必須である。

本書は、ヨーガ療法士にとっては必携の書。そしてヨーガ教室で指導している教師にとっては、教室の生徒さんたちとのコミュニケーションや教室のプログラムの進め方にも一役買う書であることは間違いない。

著者の鎌田穣先生は、長年心理教育の現場での知識と経験を持ち、ヨーガ療法士としても臨床で実践していることから、本書において具体的な、そして的確な指導内容をまとめている。とくに、アドラー心理学の専門家ということもあり、本書の中ではダルシャナに有効なアドラー心理学の理論についても触れているので、大いに参考になる。

クライエントとの初回の面接から、終結までをイメージながら読み進められ、「第9章 ヨーガ療法ダルシャナ事例」には具体的に療法士とクライエントとのやり取りを記載した事例もあり、ダルシャナを進めていくうえで、セラピストが陥りがちな落とし穴に気づかされる場面も多い。これまで、ダルシャナに苦手意識を持っていた療法士は、それを乗り越えるきっかけになるだろう。
私自身も、自らのスキルアップのためにも、ぜひ本書を片手に実践を続けたい。


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