第112回「アドラー心理学の未来志向」「マインドフルネスで、幸せのスイッチを自分の手に!」

アドラー心理学研究会Plus代表の佐高葵月代です。2022年8月20日(土)と21日(日・ZOOM)、第112回アドラー心理学研究会を開催しました。今月のテーマは「アドラー心理学の未来志向」「マインドフルネスで、幸せのスイッチを自分の手に!」です。

アドラーは著書『人生の意味の心理学』の中で、「人間のすべての創作活動の背後にあるのは、優越を求める努力であり、それは、われわれの文化に加えられるすべての貢献の源泉である。人間生活の全体は、こういう活動の太い線に沿って-下から上へ、マイナスからプラスへ、敗北から勝利へと-進行するのである」と述べています。ここから学べることは、たとえ今がマイナスと思える状況であっても、プラスに向かっているプロセスということではないでしょうか。常に、どんな時も進行中だということですね。

悲観主義と楽観主義にわかれるのは、失敗に遭遇した時の対応ではないでしょうか。今回は、楽観主義(プラス思考)と未来志向をセットで考えてみました。アドラー心理学では、私たちが持ち得るすべての力を、目標達成に必要な資源(リソース)として、活用します。そのため、自分の長所や短所を理解することは必須となります。失敗や後悔は一見するとネガティブなものと捉えがちですが、失敗は成功の母とも言われます。再出発の原動力に変え、未来や変革への大きな一歩として活用できます。

失敗しても「この体験は、いつか(自分を含め)誰かの役に立つはず」と考えることで、前に進めます。失敗体験は、プラス思考や未来志向の回路が鍛えられるトレーニングと思ってみてはどうでしょうか。今回参加したメンバーに「あなたの考えるプラス思考の人の特徴は?」と尋ねたところ、「気持ちの切り替えができる」「状況を俯瞰して、次の行動に移せる」「失敗を失敗で終わらせない」などの声が上がりました。

例えば、仕事が失敗したとしましょう。この時に「ないこと」に集中した場合は、私の能力が足りなかった。周りがフォローしてくれない。時間がない。お金がない。と、愚痴や不満、言い訳だけが残ります。しかし、視点を変えると、 私の足りない部分を補ってくれる人はいないかな? もっと詳しい人がいるか回りに聞いてみよう。スケジュールがタイトすぎるので練り直そう。今ある資金でできることは何があるだろう? というように、何らかの行動に移すきっかけがつかめます。

このように、ネガティブな状況でも少しでも可能性や希望、次の行動につなげられるようにプラス面(ポジティブな面)を模索することを「リフレーミング」と言います。これはなかなか実践的な技法で、やればやるほどプラス思考の力が付きます。

もうひとつは、1日の終わりをグレーや黒で終わらせない習慣です。つまり、嫌なこと、できなかったこと、悲しかったこと、誰かの悪口などで、締めくくらないということ。ある参加者の方は、1日の終わりにお風呂に入って、「今日自分ががんばったこと、家族に感謝できること、自分が健康であること」に感謝する言葉を実際に声に出しているということでした。これはやる価値ありますね! 言語化すること自体が客観視していること。良いことを書き出す「良いこと日記」はこれまでも研究会で推奨してきましたが、声に出すという習慣も素敵だなと思いました。

今回は、「あなたの失敗がのちに活かされて、糧になったり、誰かの役に立っていることは?」というグループワークも行いました。病気がきっかけとなった方が多いなと感じました。私自身も、がんになったり骨折をしたり(しかも3回も!)と大きなきっかけがたくさんありました。その時は辛く痛い体験でしかありませんが、過ぎてみればそれがきっかけで今の仕事に繋がったり、人間として成長したなと感じることも少なくありません。参加者の方が、「そう考えると、『失敗』という概念自体がなくなるかも」とおっしゃっていたのが、とても印象的でした。

後半は、「マインドフルネスで、幸せのスイッチを自分の手に!」です。前回の研究会で取り上げた「中核的価値」に気づき、それを満たすことを実践していると、私たちは安定して幸せであると感じます。中核的価値がすぐに見つからないとしても、日常で安定している、満たされている、嬉しい、楽しいと感じることを拾い上げていくと、そこから中核的価値が見えてくることもあります。

日々の生活の中で、嬉しい体験について記録するワークをやりました。このワークの目的は、脳の機能をネガティブなことではなく、ポジティブなことを探すモードにするためです。私たちの記憶には、嫌なことの方が残りやすいのです。そのため、些細な良いことはスルーされることが多いのです。今思い出しても、ニヤけてしまうことを思い出して書き出します。その時の感情や思考はどうでしょう?そして今思い出したときの気分は?というように詳細に書き留めます。良いことに意識を向けることは、自分への勇気づけ(自己勇気づけ)の習慣です。

「いつか誰かが私を幸せにしてくれる」「宝くじが当たったら幸せ」「有名になって、ちやほやされれば幸せになれる」など、幸福を誰かや何かに依存すること(状況依存)は、うまくいかない場合は不満が生じ、それが怒りや不安に転じることがあります。

こだわりが強い視点から物事や人を見ている限り、現実は変わりません。不満や不安を減らそうとするのではなく、小さなことでも満足できることや幸せを感じることを見つけたり、意識の中に安心や安全を散りばめる努力をすることが必要です。幸せのスイッチを入れるのも切るのも自分だということ、これが自己決定性であり、自分の人生に責任を持ち、楽しむことではないでしょうか。

今月のまとめです。

  1. 失敗体験は、プラス思考や未来志向の回路が鍛えられるトレーニング!
  2. プラス思考や未来志向には、自己勇気づけが必須。地道な実践を!
  3. 小さな幸せを見つける努力は、最終的には脳の機能さえ変化させる。
  4. つまらない執着を手放すことと、状況依存から脱却することが幸せへの近道。

次回のテーマは「劣等感の汗をかこう!」「動く瞑想-身体感覚を磨く-」です。アドラーを学び始めたとき、劣等感は悪い感情ではないと知り、大変衝撃を受けました。劣等感をバネにする生き方、劣等感悪用を防ぐ方法などを学びます。後半のマインドフルネスのワークは、動く瞑想です。簡単な動きで身体感覚に意識を向けやすくすることを実践します。

開催日は、9月17日(土・札幌市民交流プラザ)、9月18日(日・ZOOM)です。
会員にのみ、ZOOMの録画配信をしています。ぜひご利用ください。
⇒ 詳細とお申込みは、こちらから。


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