第132回 アドラー心理学とマインドフルネス「繋がっていく ~人と、そして自分と~」

アドラー心理学研究会Plus代表の佐高葵月代です。4月20日(土)と21日(日・ZOOM)、第132回アドラー心理学研究会を開催しました。今月のテーマは「繋がっていく ~人と、そして自分と~」です。

アドラーは、幸せについて実にシンプルな条件を挙げています。

幸せの3要素は、
自分自身が好きかどうか。【自己受容】
よい人間関係を持っているかどうか。【相互信頼】
そして、人や社会に貢献しているかどうかである。【貢献感】

(アルフレッド・アドラー)

今回は特に2つめの「よい人間関係を持っているかどうか。【相互信頼】」にスポットを当ててみます。対人関係を築くにあたり、信頼という要素は不可欠です。アドラーの思想にある共同体感覚の要素にも相互信頼が含まれています。

共同体感覚とは、共同体や共同体のメンバーに、どれくらい調和して自分を関係させることができるかという「能力」です。アドラー心理学では、人は誰もが目的に向かって進んでいるととらえます。

アドラーは共同体感覚を「幸福のバロメーター」と呼びました。上記アドラーの言葉にある幸福の3要素のうち3つが共同体感覚に含まれます。中でも、相手との繋がりを強くする相互信頼は、お互いの関係性の中では重要なポイントになります。他者の勇気づけの態度にも「信頼」がありますが、本来の意味としては「あなたを無条件に信じます」ですが、それを転じて「あなたはきっと自分の力で乗り越えられる、と相手を信じる」という気持ちも含まれます。

職場も家庭も、ほんらいは潤滑な運営を誰もが望んでいるはずです。アドラーは「共同体感覚は、生まれつき備わった潜在的な可能性であって、意識して育成されなければならない」と言います。共同体感覚とは、受動的・主観的な「共同体から受ける」感覚や感情よりも、主体的・能動的な「自らの共同体への関わり方」です。相手からの感謝や共感を受けることを期待するのではなく、まずは自分から積極的に感謝を伝えたり、共感する努力をすることです。

グループワークでも、自分が信じられているという感覚は、「人から大事なことを打ち明けられた時」「感謝されたとき」「ひとりじゃない、チームワークを感じた時」「お互いに共感しあえる時」「何かを任されたり、待っていてもらった時」など、様々なシーンと感覚が挙げられました。

信頼して相談できる友人や家族がいると、課題や困難を乗り越えやすくなり、また他者からの支えが精神的な安心へと繋がります。誰かと繋がっているという安心感は、オキシトシンという脳内の幸せホルモン分泌にも期待できます。

オキシトシンが脳に及ぼす作用で、周りの人の考えていることや感情に気づき、理解する力が強まります。また、オキシトシンには思いやりを深め、直観を鋭くする効果があるため、大量に分泌されると、大切な人たちへの信頼が深まり、相手の役に立ちたいという思いが強まります。これが共同体感覚の「貢献感」に繋がっていきます。

オキシトシンの作用で、社会的な繋がりに対する脳の報酬センターの反応が敏感になるため、相手を思いやることで得られる心のぬくもりが、いっそう強く感じられます。

「繋がっている」という感覚は、レジリエンスにも必要な要素とされています。レジリエンスとはストレスを受けた時に、元のコンディションに戻れる【心の回復力】であり【変化への適応力】のこと。ストレスに強くなるというより、柔軟に対応できる心の筋肉と言えます。アメリカ心理学会はレジリエンスを「逆境、心的外傷、悲劇、脅威、人間関係問題、深刻な健康問題などから起こるストレスに、うまく適応する力」と定義しています。レジリエンスには、自己認識、自制心、精神的敏速性、楽観性、自己効力感、繋がりという6つの要素が含まれます。心のしなやかさの土台にも、やはり人との繋がりは不可欠な要素なのです。

人を頼ることや人の力を借りることは、甘えではなく自分にはないマンパワーを得て、前に進むことと捉えることもできますね。

今月のまとめです。
① 共同体感覚は幸せのバロメーター。意識しなければ磨かれない。
② 繋がる感覚「相互信頼」はオキシトシンを分泌させ脳機能もUPさせる。
③ 共感コミュニケーションの実践は、相手のみならず自分との繋がりも取り戻せる技術。

次回 第133回の開催は、5月18日(土・札幌市民交流プラザ)、19日(日・ZOOM)です。
テーマはアドラー心理学とマインドフルネスで「感情を整える ~ 副産物としての感情をどう捉えるか ~」です。実はアドラー心理学では、感情をそれほど大げさに取り上げていません。かつては「劣等感の心理学」とも言われましたが、現代アドラー心理学では、劣等感は目的論に吸収されているような捉え方をされています。
アドラーは感情をライフスタイルの排泄物と呼びましたが、私はせめて「副産物」と呼びたいです(笑)。
感情をコントロールするのは無駄なのか? いえいえ、そうでもありません。マインドフルネスとレジリエンスの「自制心」の実践法ともあわせて、学びを深めましょう。 ご参加をお待ちしています。

⇒ 詳細とお申込みは、こちらから。


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