第98回「アドラー心理学の親子関係」と「マインドフルネスで捉える身体の痛み」

アドラー心理学研究会Plus代表の佐高葵月代です。2021年6月19日(土)と20日(日・ZOOM)に、第98回アドラー心理学研究会を開催しました。

今月のテーマは、先月の対人関係から引き続き、親子関係に向かいます。アドラー心理学が日本に導入されたときは、もともと子育てをターゲットにした内容だったので、親子関係への応用は非常に有効。ですが、今回は子育て中の方だけではなく、自分の年老いた親との関係にも発展させていきました。

まず、アドラー心理学の子育ての目標には「心理面」と「行動面」での目標があります。
心理面の目標は、
● 私には能力がある。→役に立つことができる貢献感を育みます。
● 人々は、私の仲間だ。→居場所があるということで、信頼感や安心感を感じます。

一方、行動面の目標は、次の通り。
●  自立すること。→問題解決能力が身につくように。自己決断ができるように。
●  社会と調和して暮らせる。→自己責任を持てるように。

そして親(大人)がこれらを実践できていることが大事です。
アドラー心理学では、親子関係を含む、すべての対人関係では、横の関係がベースになります。
横の関係は、なれあいになるというのではなく、責任や役割としての上下関係(縦の関係)は存在するが、存在としての横の関係を意識することです。

より良い関係(勇気づけ合える関係)を作るには、次の項目を意識します。
● 心理面の目標を大切に。
● 相手の存在を意識して、感謝の気持ちを伝える。
● 相手の目線での喜び、悲しみを共有し、寄り添う。(共感、コンパッション)
● 悩みや課題、困っていることを共有する(共同の課題)

かつて、認知症の母の介護をすることになった時、以前の母とはまったく人格が変わったり、できていたことができなくなったり、異常行動が増えたことがありました。私は頭を抱え、ひとりで悩み、苦しみ、泣きました。こんな時、どんどん勇気が減っていくのです。一人っ子の私は、人に相談したり、頼ることが苦手でした。母からは「強く、自立したひとになりなさい」と育てられたのが、少しばかり裏目に出たのですね。

アドラー心理学の師匠 岩井俊憲先生に相談したところ、「お母さんを愛していることをしっかり思い出して、今度はあなたが勇気づける番ですよ」と勇気づけの言葉をいただきまいた。そこから、介護をラブタスクとしてではなく、ワークタスクとして捉えることで、かなり感情的な軋轢から解放されました。

認知症の母の目線での喜び、悲しみを共有し、寄り添うことは、容易ではありませんでした。でも、私自身も、母同様に自分の人生を生きているという軸からぶれないことで、「介護させられている」「母の行動が思い通りにならない」というイライラはかなり減りました。いずれにしても、自分自身に深い思いやりを寄せ、自己勇気づけをすることの大切さを学びました。

さて、後半はマインドフルネスの学びです。「マインドフルネスで捉える身体の痛み」で、感情と結びついている痛みに気付きます。心筋梗塞や脳梗塞、肺塞栓、怪我など、直接感情と結びついていない危険な痛みを除く、ということを前提として、慢性化したり、繰り返す痛みの背後には感情が隠れていることが多いものです。

大勢の前で話さなくてはいけない、医師から病名を告げられるなどの場面では、私たちは極度に緊張し、何らかの身体症状を呈します(汗をかく、震える、クラクラする、腹痛など)。でも、その時間が過ぎたり、「異常ありません」などと告げられると、緊張が不要になるので、痛みや症状も消えていきます。このようなことは、程度の大小はあれど、誰でも体験していることでしょう。

問題は、がんばり過ぎたり、我慢しすぎたりすることで、慢性的な緊張が居座ることです。ずっとそこにあると、だんだん気づかなくなり、緊張が当たり前になります。マインドフルネスでは、日々の緊張に気づき手放すこと、外側だけでなく自分自身に意識を向けることを実践します。

今月のまとめです。

  1. こじれた親子関係の対応は、ワーク・タスクで取り組む。
  2. 「今の自分にできること」以外は、第三者、専門家に任せる方法を検討。
  3. 自分≠感情 を理解することで、痛みとの付き合い方が変わる。
  4. すべてではないが、現代医学では、痛み=脳で認知する感情の一種 と捉えるようになった。

次回のテーマは「アドラー心理学のライフタスク」、「マインドフルネスの『思考』とは?」です。
開催日は、7月17日(土・札幌市民交流プラザ)、7月18日(日・ZOOM)です。
会員のみ、ZOOMの録画配信をしています。勉強会に参加できない方は、ぜひご利用ください。
⇒ 詳細とお申込みは、こちらから。

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