第109回「逆引きアドラー」「マインドフルネスで、思考の自動操縦をストップ!」

アドラー心理学研究会Plus代表の佐高葵月代です。2022年5月21日(土)と22日(日・ZOOM)、第109回アドラー心理学研究会を開催しました。5月に入ってから、人の往来に自由度が増したような気がしています。陽気も良くて、札幌はいろんな花が咲き誇る季節となりました。トップの写真は、近くの公園で撮影したライラックです。香りをお届けできないのが残念!

さて、今回のテーマは昨年好評だった「逆引きアドラー」と「マインドフルネスで、思考の自動操縦をストップ!」 です。「逆引きアドラー」は、「こんなときは、アドラーの基本前提や技法をどう使うの?」という実際の事例に当てはめていくものです。今回は佐高が扱ったケースをもとに、検討してみました。ここでは事例の詳細は書けませんが、すれ違う母親と大学生の娘が勇気づけと共同体感覚をベースに、互いに自立をしていくという内容です。

課題を抱えているのは母親という設定です。母親は、中学時代の頃の頼りない娘の印象が強く、どんどん成長する娘のスピードについていけずに、過保護、過干渉的な行動に走ります。大学生ぐらいの年ごろだと、親に口うるさく言われると「うるさいなぁ、うざい」というような気持になることもありますね。今回のケースは、親子の心理的距離がかなり離れた状態でした。この課題解決のためのキーワードは、目的論、共同体感覚、勇気づけ、横の関係、課題分離など。研究会では最初はペアで検討し、のちにグループですり合わせ、最後に全体でシェアをしました。

机上では「こういう理論で、こう考えて」と論理的になれますが、いざ実際に自分の前にそういう人がいると、自分のライフスタイルや私的論理に基づいたアドバイスをしがちです。「私ならこうする」ではなく、アドラーの視点で考えます。研究会のメンバーには、つい親の立場、子の立場で意見したくなる声もありましたが、非常に興味深い意見が飛び交いました。

あらゆるケースで言えることですが、私見を挟まずできるだけシンプルに考えるために、基本から離れないように気を付けます。解決するのは本人であって、その人にはその力があると信じるのも大切なことですね。今回のケースで私が参考として提示したのは以下の4点です。

  1. まずは勇気づけを
    本人は一生懸命やっているつもりです。なので、「あなたが~だから、だめなの」「~すればよかったのに」という批判や勇気くじきは、たとえ子供や目下の人に対しても言わないようにします。
  2. 解決像を明確に
    悩んでいる本人には「こうなったらいいな」という期待や解決像があるかもしれませんが、悩みという厚い層に覆われており、「どうせ期待してもだめだから」とあきらめていることもあります。行動や感情の目的を考えて、解決像を何度か確認する必要があるかもしれません。あくまでも、本人の解決像であって、こちらの解決像ではないことを忘れずに!
  3. その人が一番困っていることに集中すること
    悩みの内容には複数の要素が含まれていることがほとんどです。「その中で、一番困っていることは?」と確認してから、集中してその課題に取り組みます。ここをスッキリさせることで、意外とすんなり解決の糸口が見つかったりします。
  4. 親子関係は、まずは横の関係を
    親子関係では、すぐに課題分離に走りがちですが、同居していて挨拶もしなかったり、ろくに口を利かないような悪化している状態では、課題分離はやりません! 課題分離の最終の目的は、共同の課題に取り組むこと。そのために、まずは横の関係づくりをして、お互いに協力・協働できる状態を作るのが先決です。

後半は「マインドフルネスで、思考の自動操縦をストップ!」 です。みなさんは、「デフォルト・モード・ネットワーク(DMN)」という言葉をご存知でしょうか。DMNとは脳内ネットワークのひとつで、脳が意識的な活動をしていないときに働くベースライン(安静時、何もしていない時の脳)活動です。私たちは脳で消費されるエネルギーの75%ほどを、このベースライン活動の時に使っています。つまり、ぼんやりして何もしていないように見えても、脳はフル回転していることになるのですね。

ぼんやりとして、あーでもない、こーでもないと考え続け過去や未来をさまようことを「マインドワンダリング」と呼びます。DMNでマインドワンダリングをしていると、エネルギー消費だけではなく、不安や焦りや後悔などの感情のループにはまってしまうために、何もしない日でも疲れてしまうのです。この状態にできるだけ気づいて、心を「今ここ」に戻しましょう。

マインドフルネスではDMNに陥らないために、意図的に身体や呼吸に意識を向ける瞑想を使います。今回は、呼吸に合わせて力を入れたり抜いたりする単純な動きを繰り返し、思考のスピードを緩めていく瞑想を行いました。じっと座っているのが苦手な方は、身体感覚を使った瞑想が向いている方もいらっしゃいます。

今月のまとめです。

  1. 親子関係においては、まずは横の関係と協力関係の構築を目指す。
  2. 課題分離は中級の技法。便利と思って安易に飛びつかないこと!
  3. 課題に取り組む際は「こうなったらいいな」という解決像をしっかり思い描く。
  4. 脳はものすごいエネルギーの大食漢。大食い防止には瞑想がお勧め。
  5. ボーっとしていても、DMNで脳はフル回転で思考中。自動操縦をストップさせる!

次回のテーマは「アドラー心理学の共同体感覚」、「マインドフルネスで、怒りに負けない脳づくり」です。共同体感覚は、精神的健康のバロメーターと言われています。つかみどころがないように思えますが、そこをがっちり復習していきましょう。後半のマインドフルネスでは、「つい感情に囚われてしまうのはなぜ?」を解明していきます。今回はとくに「怒り」という感情を扱います。怒りと言ってもピンからキリまでありますからねー。どうぞお楽しみに。

開催日は、6月18日(土・札幌市民交流プラザ)、6月19日(日・ZOOM)です。
会員にのみ、ZOOMの録画配信をしています。ぜひご利用ください。
⇒ 詳細とお申込みは、こちらから。


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