第123回「劣等感を乗り越えるためのレジリエンス」

アドラー心理学研究会Plus代表の佐高葵月代です。7月22日(土)と23日(日・ZOOM)、第123回アドラー心理学研究会を開催しました。今回の研究会には、神奈川県や道央、道東、道南の遠方からもメンバーが集まってくれました! このところの気温以上に、メンバーの熱気を感じました。今回は23名が参加してくれました。たくさんお越しいただき、ありがとうございました。

今年は10周年記念とあって、コロナを意識しながらできる範囲でのイベントを企画しています。その一環として、この日は10周年記念誌に掲載する写真撮影をしました。カメラマンの北田花恵さんは、昨年私のプロフィール写真を撮影していただいたご縁でお願いしました。その時の様子をブログに載せていただきました。

⇒ 北田花恵さんのブログはこちら

さて、今月のテーマは「劣等感を乗り越えるためのレジリエンス」です。当初、アドラー心理学の劣等感と、マインドフルネスのレジリエンスと分けて構成をしていたのですが、先日、医療関係者向けの講演で劣等感とレジリエンスについて興味深い示唆をいただき、きゅうきょ、テーマを統合しました。

劣等感とは不完全感を表現する精神的感覚であり、誰かや何かと比較して自分の価値が低いと感じる感情です。ひとつの感情ではなく、怒り、不安、焦り、恨み、嫉妬、羨望のような陰性感情が入り混じったものを総称しています。一般的に、陰性感情は嫌なもの、人に知られたくないものとされますが、アドラー心理学では劣等感を目標に向かっている時に感じる、健康で正常な努力と成長への刺激と考えます。

理想の自分を人生の目標として生きているので、目標追求をしている限り、現状の自分と理想の自分との間にギャップが生じ、劣等感を感じるわけです。野心的で理想が高ければ高いほど、劣等感が強くなるケースもありますね。

劣等感は目標を持ち、よりよく生きようとすることに伴う感情と捉え、それを勇気(困難を克服する活力)に変えていく努力が私たちにはできます。もしかするとすでに乗り越えた劣等感もあるかもしれません。「乗り越えた体験」は、あまり意識をせず通り過ぎてしまったかもしれません。実はこの体験こそが、自己信頼の力とレジリエンスを育む強い原動力になるのです。

レジリエンスとは一言でいうと、ストレスを受けた時に元のコンディションに戻れる【心の回復力】であり、【変化への適応力】のことです。ストレスに強くなるというより、柔軟に対応できる心の筋肉とも言えます。アメリカ心理学会はレジリエンスを「逆境、心的外傷、悲劇、脅威、人間関係問題、深刻な健康問題などから起こるストレスに、うまく適応する力」と定義しています。

レジリエンスの育成を阻むものとして、失敗したことによる被害者意識や挫折感、自己批判から生まれるネガティブな感情があります。自己共感を意識したセルフ・コンパッションとマインドフルネスを実践することで、自己批判に気づいて止めることができたり、ネガティブな感情を変える認知の変容が起こり、結果的にレジリエンスが強化されます。

グループワークでは、自分がかつて劣等感を乗り越えた体験(病気の克服、試験の合格、対人関係のブレイクスルー、経済的な問題、ダイエット成功…などなど)について語りました。乗り越えた体験は、達成感として脳内にイメージされ、ドパミンやエンドルフィンを出します。たとえ小さな達成感だとしても、それをたびたび体験(スモールステップのクリア)することにより、乗り越えた自分の力に集中することができます。

できない自分、うまくいかない現状に集中すればするほど、自分を過小評価し、勇気がくじかれてしまいます。高い目標に向かうために、努力しながら感じる劣等感を、プラスのエネルギーに変え、建設的な行動につなげるためにも、小さな成功体験を実感しましょう。

今回は、家族の課題を抱えていた方が、いままでにないチャレンジをして視点を変えたことで人生の喜びを見つけたケースや、「結婚していない」ということに劣等感を感じていた方が、人生を俯瞰することで意識が変化し、安定した日々を過ごしている体験も伺うことができました。

次のエピソードは、ZOOMの勉強会で私の劣等感について語ったことです。今でこそ私は人前で話す研修講師の仕事をしていますが、かつては人前で大恥をかき、超緊張するトラウマ体験をしました。それ以来マイクを手に持つと手や声が震えるようになり、人前で話すことを考えただけで、めまいがして倒れそうになりました。

そこで私がとった対策は、自宅にいるときにマイクと同じ程度の重さのペットボトルを手に持ち、それをマイクに見立てて、実況中継のようなことをしていました。「今日はお天気が良いですね。あら!小鳥が飛んできましたね。なんという名前の鳥でしょう?」「昨日は蕾だった花が開いてきました。お天気が良く、雨が少ないせいでしょうか。今年は色がきれいに咲きそうですね~」と、ひとりごちていました。

半年以上毎日、今この瞬間のことに意識を向け、実況中継し続けることで、マイクを持つと緊張する体験を、身体を慣らして少しずつではありましたが「大丈夫な体験」へとシフトさせることができました。

気づき、語り、府に落とすことで認知は変わります。「苦手だ」「へたくそだ」「劣等だ」と思っているのは誰でしょう? だいたいは、誰かや何かや理想と比べている、ご本人だけということが多々ありますね。

今月のまとめです。

  1. 劣等感はポジティブなエネルギーに変換可能!未来エネルギーとして活用を!
  2. 自己勇気づけは、レジリエンスを強くする習慣でもある。
  3. レジリエンス・マッスルを鍛えるには、それなりのトレーニングが必要。すでに自分にたくさん備わっている自己信頼の素をたくさん見つけよう。

次回のテーマは「勇気を与え自尊心を育てる」「自動反応に気づき、オートパイロットを止めるには?」です。
自尊心を植物としてとらえたら、勇気は水や栄養です。与えないとどうなるかな? 後半のオートパイロットはマインドフルネスのテーマとなります。雑念が多い方、ぜひご参加くださいね!

日程は8月12日(土・交流プラザ)、8月13日(日・ZOOM)です。
⇒ 詳細とお申込みは、こちらから。


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